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映画「チェンジリング」2008年◆実話をもとにしたストーリーが怖すぎる

「チェンジリング」基本情報

スキ度: 4.2

2008年 / アメリカ

監督: クリント・イーストウッド
主演: アンジェリーナ・ジョリー

ストーリー

1928年のロサンゼルス。シングルマザーのクリスティンは9歳の息子と幸せな毎日を送っていたが、ある日、家で留守番をしていた息子が失踪。それから5カ月後に発見されたとの報が入るが、クリスティンの前に現れたのは、息子によく似た見知らぬ少年だった…。

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「チェンジリング」感想(ネタバレあり)

この映画を観たのは随分前のこと。アクション女優という肩書が定着していたアンジェリーナ・ジョリーの作品ということで、重い題材でも、最後はスカッとするものだと思って観始めたのに、全編通して救いになるところが全くないままにエンドロールが始まり、しばらく動けなかったことを思い出します。

しかもそれが、実話をもとにしていると知った時の衝撃よ…。

そんなことある?ということが起こる恐ろしさ…

映画紹介のあらすじだけを見ると『失踪した息子が発見されたものの、目の前に現れたのは別人だった』なんて、「そんなの気づくだろ!」というのが普通ですよね。

ところが、その普通が通用しなかったことが恐ろしいのです。

母親が、どんなに別人だと訴えても取り合わない警察官。そのうえ「僕のママだ」と言って抱き着いてくる少年。混乱して思考停止の中、報道陣を気にして「この場だけでも」と圧力をかける警察官に押し切られれば、多くの人が同じ状況に陥るかもしれないと思わされました。

絶対違うじゃん…という隣で、ニコニコ笑顔の男の子。

「なんなん、この子!」

けれど、本当の地獄はここから。

終わりにしたい人たち

この映画が闇深いのは、子供の失踪事件とは別に、腐敗した権力と対峙しなければならなくなったこと。

警察のお手柄というときには満面の笑みで雁首揃えていた偉い人達も、いざ自分の立場を守るためには、真相解明なんてものは横に置かれ、必死に隠ぺいを図る。

どんなに証拠を揃えて訴えても警察はミスを認めようとはせず、むしろ厄介者扱い。挙句はクリスティンを強制的に精神病院へ送る始末。

病院とは名ばかりで、警察に盾突く者があれば送り込む、監獄と同じ場所でした。

病院での諸々の出来事が恐ろしすぎて…。これが現実に起きてたなんて、本当に許されないと思うけど、かかわってた病院関係者たちは、どう処分されたんだろう?

どこまでが本当で、どこまでが演出なのか、あまりに腹立つ展開が続くので、できれば半分は映画のために作られたシナリオと思いたいですが、かなり忠実に再現されたようでゾッとします。

映画の中盤から少しずつ事件の真相が見え始めて更にアンビリーバボー。

『事実は小説より奇なり』

この映画では、有り得ないと思われることが次々と重なっていきます。

どこでどう対応すれば、もっと早く修正できたんだろう。どこで何を間違えたんだろう。現代の、そして現実の事件として、自分に降りかかることが無いと、誰が言い切れるだろう。

これまでも『事実は小説より奇なり』と言いたくなる事件はいくつも起こってます。そのうえ、事件解決の糸口も、案外、捜査から外れた位置から飛び込んでくることも、ままあるのも事実ですよね。

「有り得ない」ことが有り得ない。

様々な事件・事故のニュースを見るたびに、この映画を思い出します。

世間ではすっかり「終わった事件」になっても、当事者と家族にとってはいつまでも終わることのない悪夢です。

この映画に救いがあるとしたら、クリスティに手を差し伸べた人がいたこと。

最後、背筋を伸ばして歩き出したアンジーの姿が印象的でした。

怖そう、重そう、アンジーが苦手。作品を避ける理由はそれぞれだと思いますが、この映画だけは、そうした感情を抜きにして、「まずは観て!」と言いたい作品です。

参考

『チェンジリング』のもとになった実在の事件に関しては、
Wikipediaのゴードン・ノースコット事件の項目を読めば、映画では描かれていない部分も見えてきます。

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