パンジーやビオラを育てたことのある方なら、一度は目にしたことがあるのではないかと思われる毛虫がいます。黒地に赤(オレンジ)の模様があるトゲトゲした体は、一見すると猛毒を持ってそうな雰囲気です。
その毒々しい毛虫の正体は、ツマグロヒョウモンという蝶の幼虫です。
毛虫は蛾になるとばかり思ってましたが、違うことを初めて知りました。
それにしても、蝶の姿は庭で何度も見かけていましたが、「あれと、これが、同じなの!?」と声をあげたくなるほど、幼虫と成虫では色も姿も違います。
育てていたビオラの中で初めてこの毛虫を見たときは、飛び上がるほど驚きました。
今回は、そんなツマグロヒョウモンの成長を追った写真を載せますので、興味のない方、そっち系が苦手な方はスルーしていただいたほうがよろしいかと思いますよ。(@^^)/~~~
いつもより多めにスペースを取っておくことにしま~す。
ツマグロヒョウモン
関東地方に暮らす我が家ですが、ここ十年ほどは庭で一番よく見る蝶がツマグロヒョウモンです。
昔は当たり前のように目にしていた、モンシロチョウやモンキチョウのほうが珍しいくらいです。
上の写真では、左が雄(♂)で、白い模様のある右が雌(♀)です。
ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋、Argyreus hyperbius)は、チョウ目(鱗翅目)タテハチョウ科ドクチョウ亜科ヒョウモンチョウ族に分類されるチョウの一種。雌の前翅先端部が黒色で、斜めの白帯を持つのが特徴である。
「ツマグロヒョウモン」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
驚きの能力
ツマグロヒョウモンの幼虫は、スミレ科の植物を好んで食べます。スミレ科の園芸品種と言えばパンジーやビオラです。どちらも春の庭を飾るのには欠かせない存在ですよね。
上の写真でラベンダーとマリーゴールドに止まっている様子が映っているように、蝶となったツマグロヒョウモンは、どんな花からも蜜を吸ってるように見えます。
ところが幼虫の間は、スミレ類以外で見たことがありません。
『ピンポイントで目標を見つける能力』ってどういう仕組みなんだろうと気になりますよね。
調べてみると、『ツマグロヒョウモンのメスは、幼虫のエサとなる食草や、食樹を探す必要があるので、嗅覚に関する器官が発達している』んだそうです。
ちなみに、オスはメスを見つける必要があるので、視覚のほうが発達しているということです。
北上の理由
国外では熱帯・温帯域に生息する暖かい場所を好む蝶です。日本の本州では1980年代まで近畿地方以西でしか見られなかったようですが、徐々に北上し、関東でも見られるようになりました。
温暖化の影響か!というのは間違いないとは思いますが、パンジーやビオラが増えたことも一因だという記事を読んで、ものすごく納得感がありました。
というのも、昔のパンジーは紫と黄色の組み合わせがほとんどだったのに、最近は驚くほどの種類が並んでいます。
ピンクだのブルーだの、いかにも女性が好みそうな色合いが揃い、花弁の形にフリルがついていたりと、選ぶのが楽しくてしょうがないほどです。
春にご近所を見回すと、それはもうパンジーであふれてます。
自由に空を飛べる生き物が、好物であふれる場所に飛んでこないわけがないですよねw
さて、そろそろ幼虫にご登場いただこうと思います。覚悟はいいですか?
幼虫さんの登場~♪
黒に赤い模様の毛虫
衝撃を和らげるため、とりあえず縮小写真を貼っておきます。
しっかり見たいという場合は、クリックで拡大表示できます。
ツマグロヒョウモンの幼虫は、黒地に赤…というよりオレンジの模様が入っています。体にまとったトゲトゲと色合いが、いかにも毒々しくて恐ろしく見えますが、実は無害です。
上の写真はビオラの中にいる所を撮影しました。食欲旺盛で花まで食べてしまいます。放っておいたら、ひと鉢がアッという間に丸坊主です。
上の写真を拡大するとわかるんですが、ほとんど茎だけに変り果てたビオラです。全部ご本人とその仲間が食べたせいでもあるんですが、食糧がなくなったらどうするんだろうと心配になるほどです。
ツマグロヒョウモンは、駆除する? or 駆除しない?
駆除するか、そのまま見守るか、、、悩みどころですよね。
最初の年は驚きのあまり駆除してしまいましたが、よくよく考えて、複数育てる鉢のうち、ひとつのプランターを提供するようになりました。
蝶の時は「きれい、きれい」と喜んでるのに、子供の時の姿が怖いといって駆除してしまうのも申し訳なく感じたことがひとつ。
もうひとつは、パンジーとビオラの苗を購入する時期が秋(10月~11月頃)で、その苗は冬を跨いで6月まで花を咲かせてくれます。
幼虫を見かける時期が大抵5月過ぎくらいなので、そろそろパンジー&ビオラの終了時期かなぁ~という時期と重なるんですよね。
それなら、新しい命のための食糧として提供するのも悪くないかな?って思うようになったんです。
ただあまりにも増えすぎるのも怖いので、提供するのはプランターひとつ。残りの鉢には殺虫剤の オルトラン を撒いて予防対策しておきます。
薬剤散布してないプランターには笑っちゃうほどモゾモゾと暮らしてるので、蛹になった時に下のような写真が撮れました。
あっちもこっちも蛹!状態です。
幼虫が羽化するまで
ある時、地面を歩く幼虫を発見しました。食べるものを探してるのかな…と思いましたが、他の鉢に移られては困るので元のプランターに戻しておきました。
ところが、その後意外な事実が発覚しました。
どうやら彼(?)は、蛹になる場所を求めて移動している最中だったようです。
近場で済ませる子、少し離れた場所に移動する子、どう見ても狙われやすい場所に移動した子。個性なんだか知りませんが、それぞれが、それなりに好きな場所を選んでるみたいです。
そして「ここ!」と決めた場所で、みんな『縦』にぶら下がり、固まります。こうして、徐々に蛹へと姿を変えていきます。
気づかないうちに羽化してしまう子や羽化できなかった子もいて、全部同じ子を追いかけることはできませんでしたが、一応順番を追える写真を用意してみました。
2番目と3番目は同じ子です。徐々に姿を変えて、最後は黒く変色しました。時々中で動いているようでした。でも、この場所はどう見ても敵から見えやすい場所。案の定と言うか、羽化することはありませんでした。
一番右の写真は羽化した直後のものです。下に抜け殻がぶら下がってます。たまたまジャガイモを掘り起こす作業の時に、この状態が現れました。
すぐ横でジャガイモを掘りながら様子を見ていましたが、なかなか飛び立とうとしません。かなり長い間、写真の状態でジッとしていました。
しばらくして羽根をゆぅ~っくり動かし始め、動作を確かめる感じで何度も繰り返していました。
それからしばらくして、突然パッと飛び上がりました。
この時はすぐ近くのフェンスに止まって固まりました。
驚かしたくないし、そろそ引き上げたいし、でも飛び立つ瞬間を見たいし…。
悩んでいると、一瞬「ビュッ」と風が吹きました。その瞬間!
風と一緒に舞い上がったかと思うと、ヒラヒラッと周囲を飛び、遂に飛んで行ってしまいました。
もしかしてこの風を待っていたのか?と思うほどのタイミングです。それまでは緩慢な動きだったのに、遂に目覚めた!という瞬間でした。
あの舞い上がる瞬間が、とっても素敵でした。
下の写真は、10月の庭で目にした光景です。こうして命が繋がっていく。これを見ると、やっぱり餌場の提供はやめられそうにないんです。