ある夏の日。何気なく庭を歩いてると、小さな穴を見つけました。
直径3センチほどの穴ですが、蟻さんの穴にしては大きいし、かなり綺麗~な丸で、いかにも人工的に開けられたような穴でした。
不思議に思って覗いてみると…
「ふぁっ?」
瞬間的に「ゾワゾワッ!」と背筋が凍りました。
穴の中から視線を感じたんです!!!
いや、目が合ったと言ったほうが正しいような、それくらいしっかりした視線でした。
その時は、あまりの恐怖に走って逃げました。
少ししてもう一度確認に出ると、穴の近くでモサモサと動く物体が見えました。
なんか見覚えのある形…
「あっ!」
地面を歩くなんて想像したこともなかったので一瞬目を疑いましたが、背中を丸めた姿で動くそれは、間違いなくセミの幼虫でした。
「あの穴の宿主はお主だったのかぁ~」と、正体がわかったことでホッとしたのと同時に笑ってしまいました。
きっと、驚いたのは彼?彼女?…も同じだったはず。
せいぜい抜け殻を見るくらいしか経験がなかった上に、地面を歩いてるなんて、あまりに予想外でした。
「なんでこんなところにーっ?」と思いましたが、ふと、すぐ横のソヨゴに目が行きました。
そういえば夏はソヨゴによく蝉が止まってるんですよねぇ。
セミは幼虫の間は土の中で数年を過ごし、やっと土から出ても、1週間~10日しか生きられないと言いますよね。
そうか、数年前ね…と考えながら、「あれ?」と思ったんですが、
芝生の下に数年前から?
芝張りの前にはしっかり土を掘り返したし、その後はみっちり芝が根を張ってました。
一体、どの段階でこのセミは土の中に潜ったんでしょう?
そして、外に出る時に、どうしてこんなに上手に穴が開けられるんでしょう?
そうこう考えるうちに「ハッ!!」とひらめいたんですが、
まさか、そのために、あのカマみたいな前足になってるんでしょうか?
幼虫の時と成虫になってからの姿があまりに違うセミですが、特にあの鎌のような前足は特徴的です。
それまで、あのカマは木を登るときに引っ掛けるための形だと思ってましたが、実は、一番長く過ごす土の中の生活に適した形だったの?と、考えを改めさせられた出来事でした。
違う?